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幼いヤングケアラー
イラストプロジェクト
ヤングケアラー支援活動に無料でお使いいただける各種素材をご紹介しています。
昨今日本でもその存在が知られてきたヤングケアラー。30年以上前からヤングケアラー支援を続けている支援先進国のイギリスでは、8歳以下の「幼いヤングケアラー」が見過ごされてきたことがわかってきました。
この度、自分がしているケアの状況を説明することが難しい幼い子ども達を支援するために、無料で使えるイラストや冊子、絵本などの素材がイギリスで作成されました。
こちらではその日本語版をご案内しています。どうぞみなさまのヤングケアラーのための活動に有効にご活用ください。
nagosibも翻訳、日本向けプロモーション&担当窓口としてプロジェクトに参加しています。
幼いヤングケアラー絵本
近日公開予定
ヤングケアラー先進国・イギリスにおける幼いヤングケアラーへのアプローチ
イントロダクション
あなたは「Youngest young carer」という言葉を知っていますか?それはイギリスにおいて「幼いヤングケアラー」を意味し、主に8歳以下のヤングケアラーのことを示します。
この記事は、イギリスの経験上、幼少期の子どもはヤングケアラーになり得ないという誤った想定があり、それによって幼いヤングケアラーの実情が見落とされるリスクがあるということを強調することを目的としています。イギリスでは、ヤングケアラーであることのアセスメントとヤングケアラーに対するサポートに年齢の下限はありません。
日本における子ども・若者育成支援に関する改正法では、家族の介護をする「ヤングケアラー」への支援を新たに義務づける内容で、6月5日に国会で可決・成立しました。改正法はヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行なっていると認められる子ども・若者」と定義しています。国や自治体がヤングケアラーへの支援に努めなければならないと定め、相談窓口の設置などを促進するのが狙いです。政府は、法改正により30歳前後まで支援対象に含めることで、18歳以上の若者にも切れ目なく支援を届けることを明言しています。ヤングケアラーが18歳になっても支援が継続されることは重要ですが、介護をしている幼い子どもたちもたくさんいることを忘れてはいけません。幼い子どもが無理なく行える介護の量は、青年期のヤングケアラーや若年成人の介護者よりも少なくあるべきです。
日本政府がヤングケアラーへの認知と支援を推進する方向に動いている中、ヤングケアラーのサポートに対する年齢の下限が一定程度あるべきだという誤った認識に異を唱えることが極めて重要だと思われます。
この記事では、社会の中で幼いヤングケアラーとのコミュニケーションを改善するために使用できる無料のイラストもご紹介します。執筆時点では、22の地方自治体やボランティア団体がこれらを利用しています。イングランドで20団体、日本で2団体です。すべての団体にイラストのコピーが提供されています。これらのイラストがどのように使用されたかについての情報が収集され、フィードバックが提供される予定です。私たちは、さらに多くの日本の人々がこれを有益と感じ、このプロジェクトに参加してくれることを切に望んでいます。
イギリスでは、ヤングケアラーの認知と支援は30年以上にわたって発展してきました。ヤングケアラーの生活について知られていることの多くは、研究者やボランティア団体がこれらの子どもや若者と話をすることで得られたものです。また、若年成人も子どもの頃のケア経験について語ることで貢献しています。このようなことから、次のことがわかります。
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ヤングケアラーの数の推定は、子どもたち自身が介護の責任を報告することに基づいています。これは、大人に尋ねた場合よりもはるかに多い数を示します。
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幼いヤングケアラー、特に8歳以下の子どもたちは、このような会話において大きく過小評価されています。
幼いヤングケアラーの声を聞いていますか?
ヤングケアラーが自分のニーズについて話す能力は、幼いうちは明らかに限られており、成長して成熟するにつれて発達します。その結果、8歳以下のヤングケアラーについて私たちが知っていることは、年齢の高いグループに比べてはるかに少ないことが分かっています。多くの人が認識しているよりもはるかに幼いヤングケアラーは多くいますが、これらの幼少期の子どもたちは研究から除外されることがよくあります。イギリスの議会には彼らを支援するという特定の法的義務があるにも関わらず、あまりにも多くの地域で、8歳以下のこの幼少の年齢層に対する支援がありません。したがって、重要な課題は、ヤングケアラーの話を聞く際に、幼い子どもたちの声が聞き逃されないようにするにはどうすればよいかということです。
子どもたちも対話に参加できるように
この問題に対処するために、一部の研究者が重要なステップを講じています。この記事の目的は、この発展を歓迎するとともに、視覚芸術がどのようにして幼い子供たちにこうした会話を身近なものにできるかという議論に貢献することです。当然ながら、幼い子供たちに単にアンケートを送るだけでは効果は期待できず、彼らの生活やニーズについて年齢相応の対話に参加してもらうための措置を講じる必要があります。
子どもたちとのコミュニケーションに絵を活用
ここでは、子ども向け絵本のイラストレーターであるアナ・グラサがどのように今回のイラストに取り組んでいるかをご紹介します。アナは幼い子ども達とケアについて話し合うために、さらに、こうしたケアをしている幼い子どもについて広く知ってもらうためにイラストを描きました。アナはまるで絵本のようなイラストを複数セット準備してくれました。イラストは、幼いヤングケアラーについての研究や、情報発信、彼らとの対話などに利用いただけます。また直近では新しいイラストも複数追加されています。これらの新しい絵のテーマは、ロンドンの南西に位置するキングストン・ケアラーズ・ネットワーク(Kingston Carers Network)にて、5歳~8歳のヤングケアラー達から出していただいたものです。
絵本イラストレーターのアナ・グラサ
また現在プリマス大学のカーリー・エリコットは、彼女の研究プログラム「幼少期のヤングケアラーについての研究プログラム(Young carers in early childhood research programme)」にて私たちの絵を使うことを計画してくださっており、彼女にも心から感謝申し上げます。この研究プログラムは幼いヤングケアラーの声をひろい上げることを目的としており、ケアラーズ・トラスト(Carers Trust)を含む主要関係者からの協力が得られています。
キングストン・ケアラーズ・ネットワークにて、
幼いヤングケアラー達との話し合いの様子
イラストレーターのアナ・グラサ
ヤングケアラーバニーのTシャツを着て
イラストについて
1つ目のイラストセットでは、ケアを提供しなければならない状況の子ども達が描かれています。さらに2つ目のセットでは、同じような場面が、かわいらしいうさぎの一家を用いて描かれています。幼い子ども達は空想の世界と現実世界を簡単に行き来することができます。私達はこうした絵を用いることで、幼い世代のヤングケアラーに話をしてもらい、自分の状況について考えてもらうことができると考えています。イラストの一覧は以下のリンク先にありますアナのポートフォリオにてご覧いただけます。
ヤングケアラー : 子どもバージョン
ヤングケアラー : うさぎバージョン
イラストの利用について
ヤングケアラーズ・アライアンス(the Young Carers Alliance)のメンバーは、調査研究、情報発信、幼いヤングケアラーとのコミュニケーション等の非営利目的であれば、イラストを無料で利用いただけます。なお、現在、ヤングケアラーアライアンスのメンバーに限らず、ヤングケアラー支援のあらゆる団体・組織の方にも利用いただけるようになりました。利用を希望される方は以下から申請ください。ダウンロード用リンクをお送りいたします。
You can request copies of the illustrations in English by emailing
ヤングケアラーズ・アライアンス(the Young Carers Alliance)について
ヤングケアラーズ・アライアンスは、ヤングケアラー、ヤングアダルトケアラー、またその家族の生活向上に取り組む200以上の団体・組織、500人以上の個人が参加し、今も成長を続けるネットワークです。本アライアンスは、ヤングケアラーのためにより良い改善をもらす研究、政策そして実践の代表者を集めた連携を図っています。ヤングケアラーズ・アライアンスはコラボレーションの機会、ヤングケアラーのための実践を共有する機会、ヤングケアラーのため皆で強い声をあげる機会を提供しています。
ヤングケアラーズ・アライアンスについての詳細は、以下のWEBサイトをご覧いただくか、以下のメールアドレスまでご連絡ください。
WEBサイト:https://carers.org/young-carers-alliance/young-carers-alliance
メールアドレス:youngcarersalliance@carers.org
2024年7月
By アナ・グラサ(Ana Graça)、ジョン・バングズ(John Bangs)
日本語訳:杉浦悠珠、上永吉郁佳